関東三十六不動 30番 総願寺
秩父鉄道の御花畑駅から乗車して東武伊勢崎線の加須駅まで移動。
加須駅から総願寺までは徒歩約25分とある。自分の足ならもっと速く着くだろうと歩き出したが、初めて訪れる場所で地図を見ながらなので、やはり25分程度かかってしまった。歩くのが苦手な方や猛暑日では、タクシーかバスを利用する方が良いかもしれない。
総願寺は、一つひとつの建物が大きく重厚で、歴史を感じる境内。本堂の床が地面から高く、急な階段は油断できない。
平日の夕方近くのせいか、参拝客は、ほぼおらず、受付で呼び鈴を押してお寺の方を呼んだ。
本堂にあがっての参拝はできず、通常の御賽銭のところから参拝してくださいとのこと。御開帳だから少なくとも巡礼者は堂内に入れるかと思っていたのに残念。不動明王の扉も締まっており、お目にかかれず。御開帳といってもお寺によって状況は様々のようだ。
いろいろな神社仏閣を廻って思うことは、規模の大小、受付システムの違いなど様々で、私はこじんまりとして静かで素朴な場所が好きだということ。個人的に賑やかすぎる(騒々しい)ところは苦手。規模が小さいと家族的で、ときに人情味がある御対応をしていただけるのが嬉しい。
霊感も能力もない私としては神仏と会話はできない。結局、人、神社やお寺の方と話すことになるのだから。
香りの記憶と20年前の定宿
大学生から社会人になったころ(20代前半)、シンガポールに幾度か一人旅したときに定宿とした安宿(ゲストハウス)があった。確か「ニュー・サンディ・プレイス」といって、ニュートンサーカス駅から歩いてすぐ近くのところ。
他のアジアの安宿を利用したことのある私からすれば、ずいぶん清潔で良い場所だった。トイレバスは共同だったが設備云々というより、主人のサンディが親切で気さくな方だった。サンディは1階の玄関と受付と談話室が一体になっているところに座っていて、ゲストの旅の相談に乗ってくれたり雑談をしていた。サンディは華僑で日本の漢字もなんとなく理解できたので筆談もした。あまり美味しくないが生ぬるいウーロン茶が飲み放題で常備され、テーブルの上のフルーツも好きな時に食べてよかった。その1階にはサンディの家族(妻と2人の子)も出入りしていて、家族と話すときは中国語だったと思う。
サンディは、だいたい毎晩、様々な国から来ている宿のゲストを連れて、ホーカーズやオチャードロードのバーにご飯を食べに行った。私も何度か相伴し、オランダ人やらフィンランド人と食事をした。
何度か宿を利用していたので、すっかり顔と名前を覚えられ、空港に到着して空港の公衆電話(当時スマホなどなかった)から部屋は空いているか聞いたところ、なぜか免税店でシーバスを買ってきてくれと頼まれ、買っていったこともあったし、ギリシャへ行く途中、シンガポールでのトランジットの時間に、一旦、シンガポールに入国手続してサンディに会いに行った。笑顔で迎えてくれたが、私は飛行機の時間があり、すぐに空港に戻って出国手続をし、ギリシャへ向かった。そんなこともあった。
サンディが笑顔でいつも私に言っていた言葉がある。
Donot worry. every thing is ok.(大丈夫。何も心配はいらない)
東南アジア人独特の楽観主義だったのだろうが、今思えば奥深い哲学的なものを感じる。
先日、近所を歩いているときに、アジアの街の匂いがした。おそらく東南アジア人か中国人が住んでいて、その調味料が発する香だと思う。外国の独特の香りは、その国の人が使うものに依るもので、もちろんその土地自体が発する香りではない。アジアの調味料は香りが強いので、日本の街でもその香りが漂えば、アジアのどこかの雰囲気を醸し出す。香りが演出するイメージは強い。
そんな香りを嗅いで、シンガポールの宿のことを思いだした。宿のことをウエブで検索してもヒットしない。
当時、駅前に大きな空地があって、その草むらの中を歩いて宿にアクセスした。20年以上前なので、その空地も開発されて高層マンションでも建っているだろうし、このご時世でウエブ検索して何も出てこないということは、おそらく宿は無くなったのだろう。と思いきや、グーグルで衛星写真を見ると、相変わらず木々や草むらの緑が広がっていた。
喫煙所の聖者
通勤途中に、いつも立ち寄る喫煙所がある。
だいたい同じ時刻に着くので、吸っているメンバーもだいたい同じ。もちろん、知らない方たちだが、顔だけは馴染みになる。
その中で聖者のような方がいる。
喫煙所によく見られる悪い現象として、空になった飲料缶の放置だ。一服しながら缶コーヒーを飲んで、そのまま喫煙所に置く(捨てる)輩がいる。その喫煙所にも、いくつか空き缶が放置されていることがある。
その聖者は、タバコを吸い終わるといくつか空き缶を拾っていく。他人の捨てたゴミを拾って、適切な場所に捨てているのだ。おそらく愛煙者として喫煙所を綺麗に使いたい、ゴミがたまることで喫煙所が廃止されるのを防ぎたい、喫煙者の良心と矜持によるものか、いずれにしても、余裕のない朝の通勤時に、なかなかできない行為である。
今日は、その聖者の、さらなる聖者ぶりを目の当たりにした。
聖者が一服しながらカップ式のカフェオレか何かを飲んでいた。その微かな甘い香りに誘われたのだろうか、大きなアブのような虫(とにかく害のありそうなヤバそうな虫)がカップの側面に止まった。最初スズメバチかと思ったほど、大きなアブのような虫である。ふつうならば驚き狼狽してしまうだろうが、さすがは聖者だ。そのアブのような虫を認識しながらも、まったく動じずにカップの飲料を飲んでいる。虫と顔が接近するのにだ。聖者は、静かに息を吹きかけて虫を飛ばそうとするものの、虫は飛んで行かない。私は、聖者に気を使って、見て見ぬふりをしていたが、聖者の動きは、あくまでゆったり、動じずで、紅葉した木の葉が落ちてきたかくらいの雰囲気である。
かくして、聖者は、ゴミである空き缶2つとアブのような虫がとまったカップを持ったまま、駅へ向かってゆっくり歩いて行った。こういう方もいるのだ。
今度、機会があったら、その聖者に話しかけてみよう。
秩父今宮神社
秩父鉄道の1日フリーパスは使いようによってはかなりお得で便利。電車の本数が少ないので、時刻表を眺めながら計画を立てて活用したい切符。
関東三十六不動巡り、29番(洞昌院:秩父鉄道野上駅)と30番(総願寺:加須駅)を同じ日に巡るプランの中で、秩父鉄道1日フリーパスを利用し御花畑駅で降り、秩父今宮神社に立ち寄った。御花畑駅からレトロな商店街を通り徒歩で10分程度で到着する。
この神社に惹かれた理由は、修験道の祖、役小角が祀られているから。役小角が祀られていて御朱印をいただける場所は、関東近辺ではあまり見かけない。
今宮神社は神仏習合の典型的なところで、神道の神様、仏教の竜王、稲荷、修験道の役小角と多種多様に祀られている。
まずは、本殿のお宮。
そして、役小角である神変菩薩のお堂。ここは念入りに手を合わせた。超人的な身体能力を持つ修験者、役小角にあやかりたい。
八大竜王を祀るご神木。
確かに巨大なケヤキで、ここまで大きいと神秘的。神がかり的なものを感じる。
御神木にハートの洞があり、それを見つけて携帯の待ち受けにすると良縁に恵まれるのだとか。ハートの洞はすぐに見つかった。
御朱印は、ごらんのとおり4種類をいただいた。
こじんまりとした境内だが、気持ちの良い境内だった。
秩父は古くから巡礼の地で、古刹が多い。
今回は関東三十六不動めぐりで加須へ向かうため、秩父今宮神社のみの訪問となった。
関東三十六不動 29番 洞昌院
■29番 苔不動尊 不動山 洞昌院
休暇を取って関東三十六不動めぐりの秩父編。
今年はずっとドタバタして、有給休暇をほとんんど取れておらず、もっと消化しようというのと、気候のよい時期に関東三十六不動を巡っておきたいという思惑から、今回の秩父行となった。
やはり平日は人が少なく、落ち着いていて気持ちが良い。
さて、関東三十六不動は、住んでいる場所によって行きづらいエリアがある。
私は埼玉の川口に住んでいるので、神奈川の相模原周辺や千葉の南房総エリアはきつい。秩父も同じ県内とはいえ気軽に行けるところでもない。
ということもあって、ルートを思案した。
29番の秩父と30番の加須。これを秩父鉄道を結んで1日で巡ってしまうのが良い。
秩父鉄道の1日フリーパス(1440円)を利用すれば、乗り降り自由で秩父エリアの観光もできる。秩父鉄道の熊谷を起点とすれば、熊谷~野上~羽生でフリーパスの代金は十分元が取れてしまう。
29番 洞昌院の最寄駅の野上駅。
駅全体の雰囲気がレトロで、逆に新鮮で素敵だ。
ちょっと地方に行けば、このような駅がたくさんあるのだろう。
1日何万人の人が利用する駅ってなんなのだろう。都市部から離れ、こういう風景の中に入ることは大切だ。
ドラマや映画に登場しそうな駅構内(改札付近)。
カフェもコンビニもない、こういう情緒って好き。
さて、
のどかな秩父のカントリーロードを約20分歩くと、山門に辿り着く。
ここは萩寺といわれていて、秋の七草の「萩」がたくさん群生している。
本殿に行くまでに、萩をかき分けていく。そんな感じだった。
駅から徒歩20分程度と遠いだけに、静かで長閑だった。
訪れたとき参拝客は自分だけで、写経を納め、御朱印をいただく。
お寺の方がとても良い方で、般若心経の意味のさわりを話してくれた。
ミクロからマクロ。宇宙とは、人とは。本当の幸せ、ありがたいこととは何か。
そんな話を朝の9時にしていただいた(笑)。
寺によっては(特に大きな寺)、無愛想で何も話さないところもある。対応しきれないから仕方がないが、参拝者になんらかの話をするのが本来のお寺の在り方ではないだろうか。